今回、建築・土木会社から新築工事を受注しました。延床面積は約7,500㎡。受変電設備、動力設備、電灯設備、構内情報通信網設備、交換設備、映像音響設備、拡声設備、テレビ共同受信設備、火災報知設備など、電気工事にかかわる全工種を請け負っていきます。
工期が長い現場なので、これから随時、役立つ情報や何百種類もある工種の工事方法をできる限り詳しく発信していきます。現場未経験の方にも伝わるように、できるだけ具体的に書いていくつもりです。
今回はその第一歩として、施工図作成で必須となるCADについて書きます。15年使い続けたVectorworksから、設備専用CADのTfasに切り替えた話です。
Vectorworksを15年使ってきました
自分がずっと使ってきたのはVectorworksです。現在使っているバージョンは2022。
このソフトには「レイヤ」と「クラス」という2つの管理構造があります。レイヤは他のCADにもある概念で、図面を階層ごとに重ねて管理する仕組みです。一方、クラスはVectorworks独自の考え方で、一度クラスを作っておけば、照明・コンセント・幹線といった異なるレイヤに切り替えても、同じクラスの図形をまとめて表示・非表示にできます。レイヤが「階」の管理なら、クラスは「種類」の管理です。
自由度はとても高いです。3D機能も充実していて、建築設計のような用途には非常に有効なソフトだと思います。
電気施工図では限界がありました
ただ、電気施工図に関しては正直きつかったです。
まずデータが重い。Vectorworksは汎用CADなので、電気施工図には不要な機能が多く搭載されています。ファイルサイズが20MBを超えたあたりから動作が極端に遅くなり、作図どころではなくなります。
次にデータ互換の問題です。設備業者やゼネコンとのやり取りで、Vectorworksを使っている会社はほとんどありません。現場ではAutoCADやJw_cadが主流です。データを渡すたびにDXFやDWGといった中間ファイルに変換する必要がありました。しかもVectorworksからDXFに変換すると、元データよりさらに容量が膨らみます。変換のたびに線種やレイヤ情報がずれることもあり、修正作業が発生します。
使いこなせていない部分もあったと思います。ただ、電気施工図という用途に対しては、このソフトは明らかにオーバースペックでした。
CADWe'll Tfas 14 Eを導入しました
半年ほど前、ダイテック社のCADWe'll Tfas 14 Eを導入しました。電気・空調・衛生など建築設備の施工図作成に特化したCADソフトです。5年間のライセンスで70〜80万円ほど。2ライセンス購入しました。4月から従業員が増えるので、もう1ライセンス追加する予定です。
導入して感じた大きな違いは3つあります。
動作が軽い。 Vectorworksでは20MBで止まりかけていましたが、Tfasはそれ以上のデータ量でも問題なく動きます。設備CADとして最適化されているので、描いていてストレスがありません。
データ互換がスムーズ。 DWG・DXF形式の読み書きに標準対応しています。ゼネコンや他の設備業者とのデータ授受で変換の手間がほぼなくなりました。建設現場ではAutoCADベースのデータが飛び交うので、この互換性は大きいです。
3D表現が実用的。 配管・ダクト・電気設備を3Dで表示し、干渉チェックができます。構造体との取り合いや、他設備との納まりを視覚的に確認できるので、施工前の段階で問題を潰せます。
まずやったのは構造の3Dモデル化
今回の現場でTfasを使って最初に取り組んだのは、地中梁と鉄骨の3Dモデル化です。
電気工事の施工図を描くとき、最初にぶつかるのが構造体との取り合いです。地中梁の中を配管が貫通する場合、梁のどこにスリーブを入れるか。鉄骨の位置とケーブルラックが干渉しないか。こうした検討を2Dの平面図だけでやると、見落としが出ます。
現場の規模が大きくなればなるほど、また複雑な設備が入れば入るほど、ダクトや配管が複雑に入り組みます。平面図だけで判断するのは困難です。
Tfasで構造を3D化しておけば、そこに電気の配管やケーブルラックを重ねたとき、干渉箇所が一目でわかります。設備ダクトや機器との取り合いも同様です。3Dモデル上で事前に確認しておくことで、現場での手戻りを減らせます。
以下、Tfasで実際に地中梁と鉄骨を3D化した流れです。
CAD選びは「何を描くか」で決まります
電気施工図という領域においては、専用CADの方が圧倒的に効率がいいです。動作の軽さ、データ互換性、3Dでの干渉チェック。どれも業務に直結します。
15年使い続けてきたCADを変えるのは、正直かなり苦痛でした。手に馴染んだショートカット、考えなくても指が動く操作感。それを手放すのは、長年住み慣れた家を引っ越すような感覚に近いです。最初の数日は「前の方が早かったのに」と何度も思いました。
でも、何事においてもそうですが、会社でも個人でも、一歩踏み出した先にしか見えない景色があります。踏み出す前は不安しかない。でも踏み出してみると、なぜもっと早くやらなかったのかと思う。CADの話で大げさかもしれませんが、今回の乗り換えも、まさにそうでした。
次回以降も、この現場を進めながら施工図の描き方や各工種の工事方法を発信していきます。