公共施設の天井に埋まっているファンコイルユニット(以下FCU)を更新する工事です。空調工事会社が機器を据え替え、当社は電源と風量調節スイッチの工事を担当しました。
今回の記事は、FCUの仕様確認から離線・スイッチ交換・復旧までの流れを、現場の注意点とあわせて書いていきます。
天井に埋まっている既設のFCU
旧スイッチ
ファンコイルユニットとは
ファンコイルユニットは、冷温水配管に接続されたコイルに空気を通して、室内を冷暖房する空調機器です。セントラル熱源で作った冷水・温水を各部屋に回して、ユニット内のファンで送風する方式。天井埋込・天井吊下・床置など形状が複数あります。
今回の機種は三菱電機の天井埋込ダクト型 LH-800WCR-E。
- 電源: 単相100V 50/60Hz
- 定格消費電力: 173/212W
- 風量調節スイッチ: FCR-201W(切・弱・中・強の4段)
- 接続: 端子台(0〜8番)に配線
パッケージエアコンのようにインバータで連続制御するのではなく、風量(ファン回転数)を3段階で切り替えるタップ式の多速モーターです。そのため、スイッチ側から弱・中・強の3本と電源2本の計5本を送る構成になります。
ここで注意点がひとつ。スイッチが同じ系統で複数のFCUを制御する場合、電源line(端子0)は先頭の1台目にだけ接続します。2台目以降は端子0を使いません。これは、電源lineがFCU1の端子0とスイッチの共通端子を経由して速度タップへ入り、そこから全FCUの該当端子(L/M/H)へ並列で分配される仕組みだからです。N側とアースは全台を渡り配線で繋ぎます。
今回の現場はスイッチ2個 × FCU3台の構成。1つのスイッチで3台のFCUを同時に制御し、それが2系統並列で計6台を動かしています。
スイッチ1個+FCU3台の並列配線構成
既設FCUの端子台
2台目以降の端子台、0番は使わない
電源供給の全体構成
FCUへの電源は、分電盤の分岐ブレーカーから3芯のVVFケーブル(L/N/E)で送っています。アースは筐体に直接落とします。
分電盤のブレーカーから3芯ケーブルでFCUに配線
離線の前に活線状態を検電
既設のFCUからケーブルを外す前に、必ず検電します。活線状態で端子を触ると感電・短絡の恐れがあります。
使ったのはHIOKI 3481。非接触型の検電器で、活線に近づけるとLEDとブザーで知らせます。ブレーカーを切ったあと、端子台の各端子に一つずつ当てて無電圧を確認しました。
検電器HIOKI 3481
検電しているところ
既設ケーブル離線と線番の確認
検電が済んだら、端子台から既設ケーブルを外します。ここで今回の注意点に当たりました。
仕様書に記載されたケーブル色と、実際に現場で繋がっている色が違う。
FCR-201Wの接続図では、端子台の配線は以下のように指定されています。
- 端子0:電源line(色指定なし)
- 端子1:シロ(電源接地相 N側)
- 端子2:L(弱)→ 仕様色:クロ(黒)
- 端子3:M(中)→ 仕様色:アオ(青)
- 端子4:H(強)→ 仕様色:アカ(赤)
ファンコイルユニット接続図
ところが実際に現場で繋がっていたケーブルは、仕様書の色と食い違っていました。
- 端子1:アカ(仕様はシロ)
- 端子2:シロ(仕様はクロ)
- 端子3:アオ(仕様通り)
- 端子4:クロ(仕様はアカ)
これは既設の施工時に、手元にあったケーブルの芯色ではなく端子番号に合わせて接続したケース。古い現場ではよくあります。仕様書の色名だけを見て繋ぐと、強と中が入れ替わる・動かないといったトラブルに直結します。
対策は単純で、仕様書の色名より端子番号と既設ケーブルを確認することです。離線前に「何番に何色が入っているか」を写真で記録しておけば迷いません。
端子台と、実際に繋がっている赤・白・青・黒の既設ケーブル
スイッチ交換と結線
既設のスイッチはMITSUBISHI ELECTRIC LIVING MASTER、運転表示ランプ付きのタイプ。これを同型のシンプル版に交換しました。表示灯の有無とプレート色が違うだけで、内部の回路は共通です。
風量調節スイッチは4極のロータリースイッチになっていて、共通端子と速度端子(L・M・H)の組み合わせで弱・中・強を切り替えます。
- 端子0:電源line(共通側)
- 端子1:シロ(電源接地相)
- 端子2:L(弱)
- 端子3:M(中)
- 端子4:H(強)
ツマミを「弱」に回すと共通端子とL(2)が導通、「中」でM(3)、「強」でH(4)がそれぞれ導通します。どの段でも共通側は常に繋がったまま、速度側の接点だけが切り替わります。
スイッチ仕様書
スイッチの電気の流れ
ロータリースイッチの内部では、ツマミの位置で共通端子と接続される速度端子が切り替わります。弱・中・強の3パターンで、電流がどう流れるかを図にしました。
スイッチの電気の流れ(弱・中・強の3パターン)
共通端子(0)に電源lineが入り、ロータリーで選択された速度端子(2/3/4のいずれか)からモーターの該当タップへ電流が流れます。モーターを通った電流は、N側(端子1)からAC電源へ戻って閉回路を作ります。どの段でも電源lineとN側は常にFCUに繋がっており、スイッチは「電源のオン/オフ」と「どの速度タップを使うか」を切り替える役割です。
復旧と動作確認
スイッチ交換が済んだら、既設ケーブルを新FCUの端子台へ戻します。離線前に記録した端子番号通りに繋ぐのが原則です。
絶縁抵抗測定と動作確認まで済ませて作業完了です。
新FCUの端子台へ接続
新FCU更新
まとめ
FCU更新の電気工事は、派手な作業ではありません。ですが「色が合っていれば繋がる」と思い込んだ瞬間にトラブルが起きます。
- 離線前に必ず検電
- 仕様書の色名より端子番号と既設ケーブルを確認
- 既設の状態を写真で残してから外す
この3つを外さないのが事故ゼロの近道です。同業の技術者の方にも、更新工事に入る際は改めて意識していただければと思います。
当社は空調改修に伴う電源・制御工事、計装工事、受変電改修まで対応しています。静岡エリアを中心に、全国まで出張対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
おまけ:なぜスイッチ1つで強・中・弱が切り替わるのか
FCUのファンモーターはPSC型の単相誘導電動機です。速度制御はモーター本体に仕込んである「タップ付き巻線」で実現しています。
- 主巻線の途中に3本のタップ(強・中・弱)が引き出されている
- タップごとに巻数が違う。巻数が少ないほど巻線にかかる実効電圧が下がる
- 電圧が下がるとトルクが落ち、すべりが増え、回転数が下がる
- ファンは回転数が落ちると負荷も下がる性質があるため、低電圧でも釣り合って安定回転する
回転数の式は N = 120f/p × (1 − s)。周波数fと極数pはモーター側で固定なので、すべりsを操作するのが唯一の手段です。スイッチ側は「どのタップに通電するか」を機械的に選ぶだけで、速度制御の本体はモーターの巻線構造にあります。
定トルク負荷(エレベーター等)にこの方式は使えず、ファン・ポンプのように回転数の2乗でトルク要求が減る負荷でのみ成立する仕組みです。
モーター巻線のタップ切換構造
エル・エル・イー電気株式会社