キュービクルの高圧進相コンデンサを交換しました。

夜間の停電作業です。

旧品の銘板は6600V・25kvar。新品は7020V・26.6kvar。

数字は変わりましたが、仕様書を並べると「中身は同じ容量」だとわかります。

新旧の仕様を並べる

どちらもニチコンの屋内外兼用・SH方式の油入コンデンサです。

旧品(AF662300KC5)

新品(AF702310KCC)

設備容量と定格電流は、旧品とまったく同じです。

総質量10kg、油量3.5Lも同じ。取付穴ピッチ440mmも共通なので、架台はそのまま使えました。

表示が2段なのは、50Hzと60Hzで容量が変わるためです。

新品コンデンサ(26.6/31.9kvar 7020V)
新品コンデンサ(26.6/31.9kvar 7020V)

なぜ7020Vなのか

新品の仕様書の右下には「直列リアクトル L=6%用」と書かれています。

6600V ÷(1 − 0.06)≒ 7020V

リアクトルを直列に入れると、コンデンサの端子電圧は上がります。

その分、コンデンサ側の定格を上げてある。

※なぜ上がるのか

リアクトルの電圧は電流より90°進み、コンデンサの電圧は90°遅れる。2つは逆向きで打ち消し合うため、「コンデンサの電圧 = 電源電圧 + リアクトルの電圧」になる。

6%リアクトルなら、コンデンサ側は 6600 ÷ 0.94 ≒ 7021V、リアクトル側は約421V。7021 − 421 = 6600V で電源電圧に戻る。

これが「定格電圧7020V・定格容量26.6kvar」の正体です。

回路から見た容量は25kvarのまま。だから「設備容量」は旧品と同じ数字になります。

旧品の仕様書にも、リアクトルを付けるなら6%を使うこと、6%を超えるものは使えないことが書かれていました。

リアクトルの役目は、高調波の拡大と投入時の突入電流を抑えること。

組み合わせを間違えると、容量も寿命も狂います。

交換前の旧品(25/30kvar 6600V)
交換前の旧品(25/30kvar 6600V)

取り付ける前に、地上で耐電圧試験

据え付ける前に、新品単体で試験をしました。

3つの端子を一括で短絡し、端子とケースの間に電圧をかけます。

試験電圧は10,350V、印加時間は10分。

最大使用電圧6,900Vの1.5倍です。

仕様書上の絶縁強度は22/60kV。工場では端子一括と接地端子の間で22kV・1分の試験が行われています。

それでも現場で省略はしません。

運搬中の衝撃で、碍子や内部に傷が入ることがあるからです。

10分間、電流計の振れに異常がないかを見続けます。

試験中は回転灯を置いて区画。記録係がその場で数値を書き込みます。

試験器と昇圧器のセットアップ
試験器と昇圧器のセットアップ
試験中の様子(記録・回転灯)
試験中の様子(記録・回転灯)

まず照明を確保する

作業は夜間の停電で行いました。

キュービクルを止めれば、周りの照明も消えます。

そこで、ポータブル電源とLED投光器を持ち込み、キュービクル周辺の照度を確保しました。

外部の電源に頼らないので、停電中でも明るさが途切れません。

手元が見えない状態で高圧の作業はしない。これが最初の段取りです。

ポータブル電源とLED投光器で照らしたキュービクル
ポータブル電源とLED投光器で照らしたキュービクル

停電の順番

開放は、負荷側から順に行います。

先に負荷を切っておけば、高圧の開閉器は無負荷で開けられます。

いきなり高圧側から切らない。順番には理由があります。

検電、放電、接地

高圧ゴム手袋とゴム長靴を着用し、検電で無電圧を確認。

そのうえで接地を取ります。

このコンデンサは放電抵抗を内蔵しています。

仕様書では、開放後5分で残留電圧50V以下。

それでも、放電と接地を確認してから、はじめて端子に触れます。

作業範囲はロープで囲い、関係者以外が近づけないようにしました。

保護具(高圧ゴム手袋・ゴム長靴・検電器)
保護具(高圧ゴム手袋・ゴム長靴・検電器)
旧品を外した後の盤内
旧品を外した後の盤内

締付トルクは3N·m

端子はM6のスタッド。配電線は14〜38mm²に対応しています。

仕様書の締付トルクは3±0.6N·m。

トルクレンチを3.0N·mに合わせて締めました。

M6でこの数値は、手の感覚だとすぐに超えてしまう軽さです。

締めすぎれば碍子側を傷めます。だからトルクレンチを使う。

締め終わったナットには、マーキングを入れます。いわゆる合いマークです。

次の点検で、マークがずれていないかを見るだけで緩みを確認できます。

高圧の接続部は、緩むと発熱につながります。

トルクレンチでの締め付け(3.0N·m設定)
トルクレンチでの締め付け(3.0N·m設定)
締付後の合いマーク
締付後の合いマーク

据付完了

端子保護キャップを取り付けて、据付は完了です。

取付方法は仕様書どおり正立のみ。横向きや逆さには付けられません。

据付後のコンデンサ
据付後のコンデンサ

高圧コンデンサは、キュービクルの中でも目立たない機器です。

それでも力率は電気料金の基本料金に直結します。

日本電機工業会が示す更新推奨時期は15年。

ケースの膨らみ、油のにじみ、異音。どれか1つでもあれば交換を考える時期です。

この記事は note にも掲載しています。

note版「キュービクルの高圧コンデンサを夜間停電で交換」