道路や駐車場にあるマンホールの蓋。あの下に何があるか、意外と知られていません。
見えているのは蓋だけです。でもあの下には、コンクリートの箱が埋まっています。電気工事では「ハンドホール」と呼びます。今回はこのハンドホールの設置工事を、写真付きで解説します。
ハンドホールとは何か
ハンドホールは、地中に埋設した電線管(配管)同士を接続するためのコンクリート製の構造物です。主な役割は3つあります。
・ケーブルの分岐点として使う
・長距離の通線(ケーブルを配管に通す作業)の中継点として使う
・将来のメンテナンスや増設時のアクセスポイントになる
なぜ30mごとに設置するのか
ハンドホールの設置間隔には根拠があります。国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)」では、地中埋設配管の通線区間は原則30m以内と規定されています。
ケーブルを配管に通す作業(通線)は、距離が長くなるほど摩擦抵抗が増します。30mを超えるとケーブルに過大な張力がかかり、被覆の損傷や断線のリスクが高まります。だからおおむね30mのスパンでハンドホールを設置して、通線の中継点にします。
国土交通省型 H2-6とは
ハンドホールにはサイズの規格があります。自分たちの現場規模でよく使うのが「国土交通省型 H2-6」というタイプです。
900型シリーズに分類され、内寸は900mm×900mm、深さ600mm。上部の蓋と下部の本体に分かれた2ピース構造で、重量は本体だけで数百kgあります。重機がないと動かせません。
「H2」は900型のハンドホールを意味し、「6」は深さ600mmを示します。同じ900型でもH2-9(深さ900mm)というバリエーションがあり、ケーブルの条数や分岐の多さに応じて使い分けます。
コンクリートへの穴あけ — コアドリルの出番
ハンドホールには、配管を接続するための穴が必要です。この穴あけに使うのがコアドリルという道具です。
コアドリルの刃先には工業用ダイヤモンドの粒子が埋め込まれています。ダイヤモンドは天然の物質の中で最も硬い素材です。この硬さを利用して、コンクリートを円筒状にくり抜きます。丸い穴がきれいに開くのはこの仕組みのおかげです。
穴あけの際は、必ず水を流しながら作業します。理由は3つあります。
・摩擦熱の冷却。ダイヤモンドビットが高温になると焼き付いて刃がダメになる
・粉塵の抑制。コンクリートの粉が飛散するのを水で押さえる
・切削効率の向上。水が潤滑剤の役割を果たし、スムーズに切れる
穴あけの図面をメーカーに送る
穴の数が多い場合、現場で全部あけるのは大変です。そういうときはメーカーに穴あけの図面を送って、工場であけてもらいます。
図面には穴の位置、径、方向をすべて記載します。現場で使う配管サイズと本数を図面に落とし込み、間違いがないようにします。
穴あけ完了
穴あけが終わったハンドホールがこちらです。複数の面に穴が開いています。
ハンドホールの中のケーブルの行先や納まり、地中にある電気以外の配管(水道管、ガス管、通信管など)との干渉を考慮して、配置は図面の段階で決めておきます。
据え付けにもルールがある
ハンドホールは、ただ穴を掘って置くだけではありません。据え付けにも決まり事があります。
国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)」では、ハンドホールの下に厚さ100mm以上の砂利地業(砕石敷き)を行うことが規定されています。これは設置後の地盤沈下を防ぐためです。数百kgのコンクリートの箱が長年にわたって安定するよう、基礎をしっかり固めます。
重機で吊り上げて掘削した穴に据え付け、設計通りの位置にミリ単位で合わせます。据え付けたら、地面の舗装仕上がりの高さまで調整リングでかさ上げします。
舗装面と蓋が同じ高さでぴったり揃うように合わせて、あとは舗装工事を待ちます。
完成するとこうなる
舗装が終わると、地上に見えるのは蓋だけです。コンクリートやアスファルトで仕上がると、あのコンクリートの箱が埋まっているとは想像もつきません。
駐車場や道路を歩いていて、丸い蓋を見かけたら思い出してみてください。あの下には電気のケーブルが走っていて、それを中継するためのコンクリートの箱が静かに埋まっています。
こういった細かい決まり事が、ハンドホールの設置だけでもまだまだあります。今年も設置の機会がたくさんあるので、細かく写真を撮って一つずつ説明していきます。