めっき工場で使われている整流器の更新工事を行いました。三社電機(SanRex)のSUPER MINI-REX MRSシリーズ。1台約350kg。これを5台交換します。

クレーンが入らない屋内の現場で、350kgの重量物をどう据え付けるか。今回はその搬入方法から、1次側ケーブル・2次側銅バーの接続まで、一連の流れをご紹介します。

既設の整流器
既設の整流器
既設の2次側銅バー
既設の2次側銅バー

めっき処理と整流器の関係

めっき処理は、金属の表面に別の金属の薄膜を電気的に付着させる表面処理技術です。めっき液に浸けた製品に直流電流を流すことで、液中の金属イオンが製品の表面に析出します。

この「直流電流」を供給するのが整流器の役割です。交流200Vの電源を受けて、直流15V・2000Aといった大電流・低電圧に変換します。

めっき処理と整流器の関係図
めっき処理と整流器の関係図

めっきの品質は電流の安定性に直結します。整流器が劣化すると出力が不安定になり、膜厚のムラや不良品の原因になります。そのため、定期的な更新が重要です。

今回の整流器スペック

更新した整流器は三社電機製 MRS-15020AT-40-1(SUPER MINI-REX MRSシリーズ)です。仕様書の主な内容をまとめます。

・用途:表面処理用整流器

・交流入力:3相 200V 50/60Hz

・入力容量:約39kVA

・定格直流出力:15V / 2000A / 30kW

・出力調整範囲:3〜15V(200〜2000Aにて)

・定格:Ao種(連続)

・出力調整方式:サイリスタ位相制御

・整流方式:6相半波

・冷却方式:強制風冷

・構造:鋼板製自立盤

・外形寸法:約450W × 650D × 1100H(mm)

・質量:約350kg

設置環境は屋内、周囲温度0〜40℃、相対湿度30〜85%(結露なきこと)。接地はD種接地(接地抵抗100Ω以下)が必要です。

1次側ケーブル:CVT 60sq

1次側の電源ケーブルにはCVT 60sqを使用しました。

CVTケーブルは架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(トリプレックス型)のことです。3本の線心がより合わされた構造で、電力用ケーブルとして広く使われています。

整流器の入力容量は約39kVAで、3相200V換算で約113A。CVT 60sq(60mm²)は許容電流に十分な余裕があり、電圧降下の面でも有利なサイズです。仕様書でも電源側配線に60mm²が指定されており、それに合わせた選定になっています。

搬入方法:携帯型三脚スタンドとレバーブロック

350kgの整流器を屋内に搬入します。クレーン車は建屋の中まで入れません。

今回使用したのが、携帯型三脚スタンドとレバーブロックの組み合わせです。

携帯型三脚スタンド

携帯型三脚スタンドは、クレーン車が入れない場所での重量物吊り上げに使える機材です。三脚のヘッド、ベース、ロープのセットで、少人数で移動・組立が可能です。組立時間は約3分、工具不要で設置できます。

レバーブロック 500kg

レバーブロックは、レバーを手動で操作してチェーンを巻き上げる揚重機具です。今回は定格荷重500kgのものを使用しました。

三脚スタンドとレバーブロックで吊り上げ作業
三脚スタンドとレバーブロックで吊り上げ作業

重量チェック:500kgで350kgは問題ないか

レバーブロックの定格荷重:500kg

整流器の質量:約350kg

定格の70%での使用となります。一般的に揚重機具は定格荷重の80%以下での使用が推奨されますので、500kgのレバーブロックで350kgの整流器を吊るのは問題ありません。

ただし、吊り角度によっては実荷重が増加するため、スリングの角度は60度以上を確保しました。三脚スタンドの真下に機器を配置し、できるだけ垂直に近い状態で吊り上げることが重要です。

2次側:銅バーの延長工事

整流器の2次側(直流出力側)は大電流が流れるため、ケーブルではなく銅バー(ブスバー)で接続します。

仕様書では直流側配線に「銅ブスバー 10×100 1枚、またはアルミブスバー 10×100 2枚以上」が指定されています。

今回は既設の銅バーの位置と新しい整流器の端子位置が合わなかったため、銅バーの延長加工を行いました。新しい銅バーを製作し、既設のバーとボルト接続で延長しています。

接続部は接触抵抗を最小限にするため、銅バーの接触面を研磨してから締結しました。ボルトのトルク管理も重要です。2000Aの大電流が流れる部分ですので、接触不良があると発熱・焼損の原因になります。

新しい整流器の2次側・銅バー延長
新しい整流器の2次側・銅バー延長
新しい整流器据付完了
新しい整流器据付完了

まとめ

めっき工場の整流器更新は、機器の搬入から電気接続まで幅広い電気工事のノウハウが求められる現場でした。

今回のポイントは3つです。

・350kgの重量物を三脚スタンド+レバーブロック500kgで安全に搬入

・1次側CVT 60sqの選定と敷設

・2次側銅バーの延長加工と確実な接続

整流器の更新は機器を置き換えるだけでは終わりません。銅バーの延長・加工といった現場対応が発生します。こうした一つひとつの工程を確実に積み重ねることが、安定しためっき品質につながります。