工場の高天井に残っていた水銀灯を、LED器具に更新しました。
外したのは「バラストレス水銀灯」。安定器を使わずに点灯する、今ではほとんど見かけない仕様です。
そしてもう一つ。今回は脚立でも伸縮脚立でも作業できない場所でした。そこで使ったのが、アルミ製の移動式足場です。
外した器具は、昔の高天井照明の基本形
器具は松下電工(当時)のホルダー吊具。銘板の品番は YB18804 です。
天井のボックスに吊具を付け、その下にE39ソケットと反射セードを組み合わせる形です。
同じシリーズのホルダー吊具 YB16804 の仕様図を見ると、この形の器具がどう作られていたかがわかります。
- ソケット:E39(磁器)
- 本体・フランジ:アルミダイカスト
- 器具質量:0.7kg
- 適合ランプ:水銀灯、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、バラストレス水銀灯 など
- 生産終了品
面白いのは、ランプのワット数に合わせてソケットの高さを3段階で変えられることです。
250W以下・270〜700W・940W以上で目盛りが分かれていて、セットビスで位置を調整します。
ランプによって発光する位置が違うので、セードとの位置関係を合わせて配光を整える仕組みです。
1つのホルダーで何種類ものランプに対応する。当時の高天井照明は、ランプを選んで組み合わせる考え方でした。
安定器がいらない水銀灯
水銀灯は本来、安定器とセットで使うランプです。
放電灯なので、点灯すると電流がどんどん増えようとします。それを抑えるのが安定器の役目です。
ところが今回のランプは、岩崎電気の「アイ セルフバラスト水銀ランプ」の500W。いわゆるバラストレス水銀灯です。
ランプの中に「バラストフィラメント」というタングステンのフィラメントを内蔵していて、これが安定器の代わりに電流を制御します。
だから器具側に安定器がなく、電源に直接つなぐだけで点灯します。
メーカーの資料によると、特長は3つです。
- 安定器が不要で、取扱いが簡単
- フィラメントの白熱光と水銀の光が混ざり、演色性はRa58
- 点灯直後からフィラメントが光るので、すぐ明るい
普通の水銀灯は、点灯してから明るくなるまで数分かかります。
フィラメントの光がその間を補ってくれる。昔の工場では、この手軽さが重宝されたのだと思います。
水銀灯は、もう作られていない
水銀ランプは、水銀に関する水俣条約によって2021年以降、製造と輸出入が禁止されました。
岩崎電気も2020年に水銀ランプの受注・生産を終了しています。
今付いている水銀灯が切れたら、替えのランプは手に入りにくくなる一方です。
器具ごとLEDに替えるのは、省エネのためだけではありません。照明を維持するための更新でもあります。
脚立も伸縮脚立も使えない場所
今回の照明は、壁と設備に挟まれた狭い場所の真上にありました。
天井が高く、脚立では届かない。伸縮脚立は、据える場所の床が確保できない。
高所作業車は、そもそも入れません。
こういう現場で、これまでは単管やクサビで足場を組むしかありませんでした。
材料を運び込み、組んで、終わったらばらして持ち帰る。照明1か所のために半日仕事です。
そこで今回から導入したのが、ピカコーポレイションのアルミ製移動式足場「ハッスルタワー ATL-2BJS」です。
ハッスルタワー ATL-2BJS の仕様
ATL-2BJS は、2段セットの「ATL-2B」に、キャスターセット「ATL-JS」を組み合わせたものです。
メーカー公表の仕様は次のとおりです。
- 作業床の高さ:3.18〜3.48m(キャスター付きはプラス127mm)
- 全高:4.33〜4.63m
- 作業床寸法:950×485mm
- わく寸法(支柱中心):1.00×0.55m
- 質量:51.0kg(2段セット)
- 最大使用質量:100kg
- 材質:アルミ
- キャスター:φ125mm ウレタン製、ストッパー付き
設置面積はおよそ1m×0.55m。脚立を開くのとほとんど変わらない広さで組めます。
使ってみてよかったところ
まず軽いことです。2段セットで51kg。部材はひとつずつ手で運べる重さです。
組立ては、フックを掛けると自動でロックがかかるオートロック式で、工具がいりません。
ばらせばライトバンにも積めるとメーカーが案内している大きさです。
脚は4本とも30cmの範囲で6mmピッチで伸縮できます。床に段差があっても水平を出せます。
作業床は開閉式で、足場の内側から床の開口部(約527×422mm)を通って上がれます。外側にぶら下がって登る必要がありません。
キャスターを付けておけば、組んだまま次の照明の下へ移動できます。
狭い場所では、この「組み直さなくていい」ことが一番効きます。
なお、足場の組立て・解体・変更の作業は、法令で特別教育が必要な業務です。
軽くて簡単でも、扱いは足場です。手すりと作業床の固定を確認してから上がります。
新しい器具はパナソニック NYM20200LR9
取り付けたのは、パナソニックのLED高天井用照明器具 NYM20200LR9 です。メーカー公表の仕様は次のとおりです。
- 種類:天井直付型・拡散タイプ・パネル付型
- 明るさの目安:水銀灯300形1灯器具相当
- 器具光束:11,000lm
- 消費電力:60.3W
- 固有エネルギー消費効率:182.4lm/W
- 光源色:昼白色(5000K)・Ra70
- 定格電圧:100〜242V
- 調光:連続調光型(約5〜100%、調光器は別売)
- 質量:2kg
- 光束維持率:40,000時間で85%
- 取付周囲温度:-20〜40℃
- 落下防止ワイヤー付き
500Wのランプが、60.3Wの器具に変わりました。
ワット数は消費電力で、明るさそのものではありません。それでも、消費電力の桁が一つ減りました。
器具も2kg。足場の上で一人で持ち上げて固定できる重さです。
点灯した瞬間から全光。水銀灯のように、明るくなるまで待つ時間もありません。
古い工場には、今では作られていない照明器具がまだ残っています。
仕様図を読むと、当時の設計者がどう考えていたかが見えてきます。
そして、届かない場所にどう安全に上がるか。道具を一つ変えるだけで、現場の段取りは大きく変わります。
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