高圧受電設備を新しくしたら、最後に必ずやる試験があります。絶縁耐力試験、いわゆる「耐圧試験」です。

ふだん6600Vで使う設備に、わざと10350Vをかける。10分間、絶縁が破れないことを確認して、はじめて電気を流していい設備になります。

今回はその現場の機器構成を、メーカーの取扱説明書をもとに解説します。並んだ3つの箱が、それぞれ何をしているのか。

耐圧試験中の表示板とキュービクルの全景

耐圧試験中。キュービクル内に試験機器を設置して実施する


なぜ10350Vなのか

試験電圧は電気設備技術基準の解釈 第14条で決まっています。計算は2段階です。

まず最大使用電圧。公称電圧の1.15÷1.1倍と定められています。次に試験電圧。最大使用電圧の1.5倍です。

6600V × 1.15 ÷ 1.1 = 6900V(最大使用電圧)

6900V × 1.5 = 10350V(試験電圧)

この10350Vを電路と大地の間に連続10分間加えて、絶縁破壊しなければ合格。数字は規格どおりで、現場で勝手に動かせる値ではありません。


機器は大きく3つに分かれる

青いマットの上に2台、キュービクルの中に2台。役割で分けると3つです。

青いマットの上に置いた制御部。IP-Rマルチリレーテスタと電源抵抗部の2台

青いマットの上の2台=制御部(IP-Rマルチリレーテスタ+電源抵抗部)

キュービクル内に設置した耐圧トランスと高圧リアクトル

キュービクル内の2台=耐圧トランス(左)と高圧リアクトル(右)

役割機器はたらき
制御部IP-R マルチリレーテスタ
(ムサシインテック)
0〜120Vを調整・計測。電圧計・電流計・カウンター、異常時に出力を切る遮断回路
耐圧トランスR-1220K
(ムサシインテック)
巻線比1:100で0〜12000Vに昇圧。2kVA・定格二次電流167mA・10分定格
高圧リアクトルL-13K10
(双興電機製作所)
定格13kV・使用電圧10.35kVで電流98mA。充電電流を補償する

ひとつ目が制御部。ムサシインテックのIP-R形マルチリレーテスタです。ここで0〜120Vの電圧を手元のダイヤルでゆっくり上げていく。電圧計・電流計・試験時間のカウンター、そして異常時に出力を切る遮断回路もここに入っています。

ふたつ目が耐圧トランス。同じくムサシインテックのR-1220K。入力0〜120Vを巻線比1:100で0〜12000Vまで昇圧します。容量2kVA、定格二次電流167mA、定格時間は10分。制御部で103.5Vまで上げると、出力が10350Vになる計算です。

R-1220K耐圧トランスの銘板。12000V/120V/E端子

R-1220K耐圧トランスの銘板(12000V/120V/E端子)

みっつ目が高圧リアクトル。双興電機製作所のL-13K10。定格13kV、使用電圧10.35kVで電流98mA。これが今回の試験のキーになります。

高圧リアクトル L-13K10 の銘板。10.35kV時98mA

高圧リアクトルの銘板(L-13K、10.35kV、98mA)


どこの絶縁を測っているのか

ではケーブルのどこを測っているのか。試験電圧は、充電部である導体(芯線)と、接地された側との間に加えます。

ケーブルでいえば、中心の導体と、その外側にある接地されたシース・遮へい層の間。つまり両者にはさまれた絶縁体そのものが対象です。次の断面図でいうと、導体と接地シースの間にある絶縁体(誘電体)の層、ちょうど対地静電容量Cができている場所。あの絶縁が10350Vに耐えるかを見ている、と考えると分かりやすいと思います。

3心ケーブルの場合は、3本の導体を一括で短絡し、まとめて対地間に電圧を印加します(トランス容量が足りないときは1心ずつ分割する方法もあります)。

そして実際には、ケーブル単体だけでなく、それにつながる受電設備の充電部(母線やブッシングなど)も一緒に、高圧側をまるごと対地間で試験します。だから事前に断路器を開いて試験区間を区切り、避雷器のように試験電圧をかけてはいけない機器は切り離しておくわけです。


対地静電容量と充電電流

そもそも、なぜ絶縁体でできたケーブルに電流が流れるのか。鍵は「対地静電容量」です。

高圧ケーブルは、中心の導体(芯線)と、その外側にある接地されたシース・遮へい層が、絶縁体をはさんで向かい合った構造をしています。これは平行板コンデンサとまったく同じ。導体と大地の間に静電容量を持っていて、これを対地静電容量と呼びます。

試験電圧は交流です。コンデンサに交流をかけると、プラスとマイナスへの充電・放電を毎サイクル繰り返すため、電流が流れ続ける。これが充電電流の正体です。絶縁体は電気をほとんど通さないのに電流が流れるのは、絶縁が悪いからではなく、この静電容量を充放電しているからです。

大きさは Ic = 2πf C E。周波数f、対地静電容量C、試験電圧Eに比例します。ケーブルが長いほど向かい合う面積が増えてCが大きくなり、Icも増える。だから長いケーブルほどトランス容量を食う、というわけです。

対地静電容量と充電電流の関係を示す図。ケーブル断面と等価回路

対地静電容量と充電電流の関係(導体と接地シースが絶縁体を挟んでコンデンサになる)


リアクトルがある理由

いま見たとおり、ケーブルや受電設備は対地静電容量を持つため、高電圧をかけると充電電流が流れます。ケーブルが長いほどこの電流は大きくなり、トランス容量を食いつぶします。

ここでリアクトル(コイル)を負荷と並列に入れる。コイルに流れる電流は、充電電流とちょうど逆向き。並列につなぐと打ち消し合って、トランスは差し引きの少ない電流だけ供給すればよくなります。

つまり小さなトランスのまま、長いケーブル・大きな設備を試験できる。取説でも「容量性負荷と並列にリアクトルを接続することで試験可能なケーブル長を長くできる」と明記されています。台数を増やせば、その分だけ試験できる容量も増える仕組みです。

結線のイメージは次の図のとおり。電源→制御部→耐圧トランスと進み、トランスの12000V出力に対して被試験物とリアクトルが並列にぶら下がる。トランス側の電流計(A1)が出力電流を、リアクトル側の電流計(A2)が被試験物の充電電流を示します。

高圧絶縁耐力試験の結線図。電源・制御部・耐圧トランス・被試験物・リアクトル

耐圧試験の結線図(取説の結線図をもとに作成)


数字で見るリアクトルの効果

実際の電流で見ると、リアクトルの働きがはっきりします。リアクトルとケーブルの静電容量は、トランスから見て並列。電流の向きが互いに逆位相(約180°)なので、トランスが実際に供給する2次電流は、両者の差し引きになります。

トランス2次電流 = 充電電流 - リアクトル電流

充電電流 = トランス2次電流 + リアクトル電流

数字を入れてみます。リアクトルL-13K10は銘板に「10.35kV時 98mA」とあるので、試験電圧10350Vをかけたときのリアクトル電流は約98mA。今回の実際の測定では、トランスの2次電流計(A1)が95mAを指していました。

充電電流 = 95mA + 98mA = 193mA

被試験物には193mAの充電電流が流れていて、そのうち98mAをリアクトルが肩代わりし、トランスは残り95mAだけを供給している、という状態です。

ここがポイントで、R-1220Kトランスの定格2次電流は167mA。リアクトルがなければ193mA流す必要があり定格オーバーですが、リアクトルが98mAを打ち消すことで、トランス負担を95mAに抑えて試験できています。リアクトルがあるから成立する試験、というわけです。

(リアクトル電流は電圧に比例するので、印加電圧が10350Vからずれればその比で換算します。)


試験の流れ

取説の手順を現場の言葉でまとめると、こうなります。

まず停電作業。遮断器(CB)を切り、断路器(DS)を開いて負荷側を開放。高圧検電器で無電圧を確認し、短絡接地で一度しっかり放電・接地してから被試験物を分離する。危険区画を明示して、絶縁抵抗計で絶縁を測る。ここまでが準備で、一番気を抜けないところです。

被試験物(キュービクル内)への高圧リード接続部

被試験物(キュービクル内)への高圧リード接続部

次に結線と極性確認。制御部・トランス・リアクトル・接地を取説の結線図どおりにつなぎ、極性確認ランプの点灯を見る。

そして遮断電流の設定。トランスの12000V端子を一度接地に短絡し、想定する充電電流の150%程度で遮断回路が動く位置にS.POINT ADJ.を合わせておく。万一絶縁が破れたとき、ここで自動的に電圧が切れます。

最後に本番。被試験物をつなぎ、電圧電流調整ダイヤルをゆっくり回して10350Vへ。そのまま10分間保持します。

異常は何で判断するのか。鍵は電流計です。正常なら、被試験物に流れる充電電流が一定のまま安定し、10分を走りきります。もし絶縁が破壊すると、電流が一気に跳ね上がる。健全なときの被試験物は絶縁体、つまりほぼ電気を通さない高抵抗で、流れるのは静電容量による充電電流とわずかな漏れ電流だけです。ところが絶縁が破れた瞬間、そこに導電路(地絡)ができて大地へ電流が流れ込む。負荷が「高抵抗のコンデンサ」から「ほぼ短絡」へ急変するため、電流が跳ね上がるわけです。この急増を捉え、あらかじめ設定しておいた遮断電流値で遮断回路が自動的に作動して試験電圧が切れる。つまり「電流計が急増し、装置が落ちる」のが異常のサインです。逆に10分間、電流が安定して何も落ちなければ合格になります。

10分間異常がなければ、ダイヤルを0に戻し、STOP、主電源OFF。高電圧のまま急にSTOPを押したり主電源を切ると、異常電圧が出て被試験物を絶縁破壊させることがあるので、必ずダイヤルをゆっくり0へ戻してからにする。終わったら放電棒で電荷を完全に抜いて終了です。


耐圧試験のあとに — 受電までの試験

絶縁耐力試験が終わっても、受電までにはまだやることがあります。当日の流れを写真で追っておきます。

アースフック(短絡接地)

高圧の作業で最初に身を守るのがこれ。検電で無電圧を確認したら、アースフックで充電部を確実に接地・短絡し、残留電荷を逃がします。試験の合間も「いつ電気が来てもいい」前提で、接地を取ってから手を入れる。地味ですが、感電事故を防ぐ最大の備えです。

キュービクル内に取り付けたアースフック(短絡接地)

キュービクル内に取り付けたアースフック(短絡接地)

SOG(地絡保護)の動作試験

引込柱の上にあるのがSOG。地絡や過電流を検出するとPAS(高圧の開閉器)を切って、事故を構外へ波及させない装置です。この制御装置の地絡継電器(GR、方向性のDGR)が、決められた電流・時間・方向で正しく動くかを、専用のリレーテスタ(GR・DGRリレーテスタ)で試験します。最小動作電流、動作時間、方向性をひとつずつ確認。守りの要なので念入りに見ます。

柱上SOG制御装置とリレーテスタによる動作試験

柱上SOG制御装置とリレーテスタ(GR・DGR)による動作試験

接地抵抗測定

アーステスタで接地抵抗を測ります。高圧機器の外箱や避雷器のA種接地、変圧器のB種接地などが、規定値以下に収まっているか。接地が効いていないと、地絡時に機器の電位が上がって危険なので、数値で確認します。

アーステスタ(接地抵抗計)による接地抵抗測定

アーステスタ(接地抵抗計)による接地抵抗測定

最後に、電力会社受電

すべての試験に合格して、ようやく電力会社が送電。PASが入り、設備に初めて電気が流れます。ここまで来て受電です。長い一日ですが、無事に灯がともる瞬間が、この仕事の区切りになります。

全試験合格後、電力会社による受電

全試験合格後、電力会社による受電


数字どおりに、手順どおりに

高圧の試験は派手さはありません。10350Vを10分かけて、何も起きないのが合格。

それでも一つ間違えれば、設備も人も危ない。だからこそ規格の数字、取説の手順を一つずつ確実に踏む。地味な確認の積み重ねが、設備を安全に世に出すということだと思っています。

当社エル・エル・イー電気は、静岡県でキュービクル改修をはじめとする高圧受電設備の工事に取り組んでいます。こうした竣工試験まで含めて、設備のライフサイクルに向き合っていきます。

キュービクル新設工事シリーズ(本記事は施工レポート③)
① キュービクル新設工事(電力協議〜基礎打設) → ② 本体据付と高圧ケーブル結線 →