工場敷地内に新しく建てたプレハブ小屋へ、エアコンを1台据え付けました。

電気工事は2回線。エアコン専用回路と電灯回路です。機種はダイキンの2026年モデル、6畳用のCXシリーズです。室外機は耐重塩害仕様(E2)を選定しました。今回はその施工記録です。


機種選定:S226ATCS(CXシリーズ)耐重塩害仕様

選んだのはダイキン S226ATCS-Wです。室内機 F226ATCS-W、室外機 R226ACSE2 のセットになります。冷暖房ともに2.2kWで6畳〜9畳に対応しています。電源は単相100V・15Aです。冷媒はR32を0.44kg封入しています。

「2.2kW」は冷暖房能力です。電気容量ではありません

混同しやすいので最初に整理しておきます。

2.2kWを身近な熱に置き換えてみます

1秒あたり2,200ジュールと言われてもイメージしづらいので、身の回りで「1kW」のものを並べてみます。

つまりエアコン2.2kWの能力は、ざっくりと次のような量になります。

6畳の部屋にとっては十分すぎる量だということが分かります。

6畳の部屋をどれくらいで冷やせるか(机上計算)

空気1m³を1℃変えるのに必要な熱量は約1.2kJです。

机上では1分ちょっとで5℃下がる計算になります。実際は壁・家具・外気侵入・湿気の除去(潜熱処理)にも能力を使うので、もう少し時間がかかります。それでも「冷暖房能力2.2kW」が6畳に十分であることは、数字で裏付けが取れます。

なぜ「能力」と呼び、「熱量」と呼ばないのでしょうか

電気ストーブは電気を熱に変える機械です。1kWの電気を入れると1kWの熱が出ます(COP=1.0)。変換しているだけになります。

エアコンは違います。外の熱を中に運び込む(暖房)/中の熱を外に運び出す(冷房)機械です。電気は「熱を運ぶための動力」として使います。冷媒を圧縮・膨張させるポンプを回すのが電気の役目で、運ばれる熱の量はその動力よりずっと大きくなります。

この機種の数字で確認してみます。

電気の5.8倍の熱を動かす機械なので、「2.2kW分の電気を消費している」ではありません。運んでいる熱の量が2.2kWです。だから「能力」と呼びます。

電気工事側で見るときの数字

「○○kWのエアコン」と言うときの数字は能力であって、電気容量ではありません。電気工事の容量設計で見るのは別の3つになります。

カタログで「2.2kW」を見たら能力、「560W」「6.5A」を見たら電気側の話、と切り分けて読むようにしています。

耐重塩害仕様(E2)を選んだ理由

通常仕様はホワイトですが、E2は外装がライトキャメルです。ケーシングからネジ、熱交換器のフィンまで二層コーティングと耐食処理がされています。海岸沿いや工業地帯で塩分・腐食性ガスの影響を受ける場所向けのグレードになります。今回の現場は海岸に近く、潮風の影響を受けるためE2を選定しました


エアコンの原理(ヒートポンプ冷凍サイクル)

エアコンは冷媒(R32)を圧縮・膨張させて熱を運ぶ機械です。冷蔵庫やエコキュートと同じヒートポンプ方式になります。

冷房時は、室内機の熱交換器で空気から熱を奪い、ガス管を通って室外機の圧縮機へ送ります。圧縮機で高温高圧にしたガスを外気で冷やして液体に戻し(凝縮)、電動弁で減圧してから室内機に戻します。室内に冷気を吹き出しているのではなく、「室内の熱を外に運び出している」というのが正しい理解になります。

暖房時は逆方向です。四方弁で冷媒の流れを切り替えるだけで、同じ配管・同じ機械が冷房にも暖房にも使えます。

R32はR410Aより地球温暖化係数(GWP)が約3分の1です。低圧側設計圧力2.26MPa、高圧側4.17MPaで動きます。配管は液管とガス管の2本セットになります。


銅管「2分3分」とは何か

エアコン業界では銅管のサイズを「2分(にぶ)」「3分(さんぶ)」と呼びます。家庭用は2分3分セットが標準です。

「分(ぶ)」はインチを8分割した日本独自の呼称です。1分=1/8インチ=約3.175mmになります。だから2分は2/8=1/4インチで外径6.4mm、3分は3/8インチで外径9.5mmになります。

家庭用は2分3分、業務用エアコンになると3分5分(φ9.5/φ15.9)や4分6分(φ12.7/φ19.1)と太くなります。能力が大きくなるほど冷媒流量が増えるためです。

フレアナットの締付トルクも管径で違います。今回の2分3分なら液管14.2〜17.2N·m、ガス管32.7〜39.9N·mが目安です(取説値)。


電気工事:分電盤に2回線追加と渡り線3芯

このプレハブ小屋には既設の分電盤があり、主幹は単3中性線欠相保護付の漏電ブレーカでした(パナソニックABF-60、100/200V 40A、感度30mA)。

今回はそこに2回線を新設しました。

電源は室内機側のコンセントから

このダイキンCXシリーズは「室内電源」タイプです。カタログにも「室内電源 単100V 15A」と明記されています。電源プラグは室内機側にあり、コンセントから差し込むのは室内機になります。室外機は単独で電源を取らず、すべて室内機からの渡り線で電気と信号を受け取ります。

つまり電源の流れは次のようになります。

分電盤(20A) → 室内漏電ブレーカBOX(15A・30mA) → 専用コンセント → 室内機の電源プラグ → 室内機の制御基板 → 渡り線3芯+アース → 室外機

漏電ブレーカBOX(ミライWB-1DM)とコンセントは室内に設置しました。エアコン専用回路の二次側保護を分岐の入口に持ってくるためです。コンセントから先のコードは室内機のプラグへ直接接続します。

なぜ専用回路が必要か

専用回路の根拠は2つあります。

1. メーカー取説の指定

ダイキンの据付説明書には「電気工事は……専用回路を使用する」と警告事項として明記されています(取説P7、感電・火災の原因)。メーカーの保証範囲を満たすためには専用回路必須です。

2. 内線規程3605-3 2項および資料3-6-5 3項

民間規格である内線規程(JEAC8001、一般社団法人日本電気協会発行)に、「定格電流が10Aを超える据置形の大型電気機械器具については、別に専用の分岐回路を設けること」と規定されています。法令上の義務ではありませんが、安全上の推奨事項として実務では従うようにしています。

今回の機種は冷房定格6.5A、暖房5.4A、最大運転時で約8Aです。この機種単体では「10A超」に該当しませんが、より上位機種(4.0kW以上)では明確に該当します。家庭用エアコン全般で「専用回路は当然」と扱われる根拠はここにあります。

実質的な理由

定格6.5Aでも、最大運転時は消費電力820W前後まで上がります。他機器と混在させるとブレーカ容量を超える可能性、また電圧降下で他の機器(特に照明)に影響が出ることがあります。「エアコン起動で照明がチラつく」のは突入電流より電圧降下が主因です。専用回路なら配線抵抗を分岐で共有しないので、これらが避けられます。

室内機と室外機をつなぐ「渡り線」3芯の意味

室外機と室内機は、4本の電線(VVF 3芯+アース)で接続します。これが「渡り線」または「連絡電線」と呼ばれるものになります。色と役割は決まっています。

ポイントは3番(赤)が信号線だということです。1番と3番を逆に配線すると、通電してもエラーで動きません(基板が壊れることもあります)。番号と色を端子台でしっかり合わせます。

連絡電線の太さ

取説の指定では、次のようになっています。


エアコン施工手順(据付板〜真空引きまで)

写真に沿って手順を追っていきます。

1. 据付板の墨出しと固定

プレハブの内壁は鋼板パネルです。アルミの目地を避けてビス固定します。水準器で水平を出してから本締めします。水漏れ防止のため、据付板は水準器で水平に取り付けます(取説指定)。ここで斜めになるとドレン水が逆流します。

天井面から本体を30mm以上離します(運転効率とメンテナンス性のため)。背面側壁面からも50mm以上確保します。後付けのHAシステム(遠隔制御機器)用別売品の取付スペースを残すためです。

据付高さは床面から1.8m〜2mが一般的な目安です。低すぎると冷暖風が部屋全体に行きわたりません。

2. 配管穴の開口

ホールソーで内径φ65mm以上の穴を開けます。穴は室外側に下り勾配をつけます(水漏れ防止のため)。これは取説の「警告」事項になります。室内側が低いと、配管を伝った雨水・結露水が室内に浸入してしまいます。

配管は冷媒管2本+ドレンホース+連絡電線の4本まとめになります。メタルラスや金属板を使った壁を貫通させるときは、貫通用スリーブとウォールキャップ必須です(発熱や感電・火災防止のため)。

穴の周囲はパテまたはコーキング材で室内側と室外側の両方から埋めます。空気の侵入による結露・室内温度の誤検知・小動物侵入を防ぐためです。

3. 室内機の取付と配管接続

フレア加工

R32用・R410A用フレアツール(クラッチ式)を使います。ダイスからの出しろA=0〜0.5mmにセットします。フレア加工後は真円で均一にできているか必ずチェックします。フレア内面に傷がある/締め過ぎて割れているものはNGになります。

ガス漏れ防止のため、フレア内面のみにガス漏れ防止剤を塗布します。フレア外面・ネジ部(フレアナット、ユニオン)には冷凍機油やガス漏れ防止剤を塗布しません(フレアナットの割れ・ネジ部破損の原因になります)。

締付トルク(取説指定)

最初手回しで3〜4回転ねじ込み、その後トルクレンチで指定トルクで締めます。

締め過ぎると長期経過後にフレアナットが割れてガス漏れの原因になります。フレアナットは新しいもの(製品に取り付いているもの)を使います。既設配管再利用時もリフレア&新品ナット必須です。

ちなみにR32冷媒はR410A冷媒で使っていた既設配管に接続可能です。ただし新たにフレア加工が必要になります。

4. ドレンホース接続

施工後はエアフィルターを外し、水を熱交換器に伝わらせてドレンパンに注ぎ、ドレンホースから水が流れ出ることを確認します(ドレンチェック)。

5. 真空引き(エアパージ)

R32は真空ポンプによる真空引き必須です。チャージホースで冷媒ガスを使ったエアパージは環境保護の観点から禁止になっています(取説P7)。

取説手順(要約)

  1. R32/R410A用ツール(ゲージマニホールド・チャージホース・真空ポンプアダプタ等)を使用します
  2. ゲージマニホールドの低圧側バルブを全開、高圧側を全閉にします(高圧側は以降操作しません)
  3. 真空引きで連成計が-0.1MPa(-76cmHg)まで下がるのを確認します
  4. 真空ポンプ運転時間は10分以上です(取説指定)
  5. 低圧側バルブを全閉にして真空ポンプを停止します
  6. 1〜2分間そのままで、連成計の針が戻らないことを確認します(戻る場合は水分混入か接続部漏れ→点検→ナット締め直し→再真空引き)
  7. 液閉鎖弁、ガス閉鎖弁の弁ぶたを外します
  8. 液閉鎖弁の弁棒を六角レンチ(対辺4mm)で反時計方向に90°開き、5秒後に閉じます
  9. ガス漏れ検知器(HFC冷媒対応品)または検知液でフレアナット接続部のガス漏れを確認します
  10. ガス閉鎖弁のサービスポートからチャージホースを外し、液・ガス両閉鎖弁を全開にします(弁棒は当たりで止め、それ以上回しません)
  11. 弁ぶたとサービスポートのキャップをトルクレンチで規定トルク締付します(締め忘れガス漏れ厳禁)

R32は水分に弱く、湿気が残ると冷媒と反応して酸を作り、コンプレッサを傷めてしまいます。

配管が長い場合

6. ガス放出と試運転

室外機のサービスポートから六角レンチで閉鎖弁を開け、冷媒を全系統に回します。フレア部に石鹸水を吹いてリーク確認をします。最後に強制冷房運転で動作確認をします。強制冷房は室内機の運転/停止ボタンを5秒以上長押しで起動します。


完了確認:絶縁抵抗とアース工事

アース工事(D種接地)

取説の指定どおり、D種接地工事を実施しました。

今回は分電盤主幹に30mA高速型漏電遮断器、二次側にも15A 30mAの漏電遮断器を入れているので、500Ω以下条件で運用しています。実測値はもちろん100Ωよりはるかに低くなっています。


据付説明書の重要ポイントまとめ

機器同梱の据付説明書(3P817524-2、全8ページ)から、押さえておくべき項目を整理しておきます。

据付場所の選定(室内機)

据付場所の選定(室外機)

室外機の据付スペース(壁囲みパターン別)

対面壁の高さは1.2m以下とします。

配管・冷媒関連(R226ACSE2)

電気関連

安全上の注意

試運転チェックリスト(取説P9より抜粋)

  1. 電源プラグの差込確認
  2. アース工事完了
  3. 冷媒配管のガス漏れ確認(検知器または石鹸水)
  4. 据付板水平
  5. ドレン排水確認(水を熱交換器に流してドレンホースから排水を確認)
  6. 試運転で異音・振動・エラーランプの有無確認
  7. 長配管時はリモコンで「長配管設定」を「入」にしてあるか

【写真14:取説の据付・使用上の注意点ページ】


まとめ

プレハブ小屋1棟、6畳用エアコン1台、2回路配線。書き出すとシンプルですが、機種選定(耐重塩害)・専用回路の確保・真空引き・絶縁測定と、押さえる項目は多くあります。

エアコン取付は「壁に穴を開けて配管を繋ぐだけ」と思われがちですが、電気・冷媒・ドレンの3系統を同時に扱う複合工事になります。電気工事会社が一括で受けると、電源確保からブレーカ容量、アース工事まで一貫して設計できるのが強みです。

次は同じ敷地内の事務所棟も計画中です。ここで得た知見をそのまま使っていく予定です。

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