ビルの電灯タイマー回路で、電磁接触器(マグネット)の不具合が出ました。竣工は2001年、分電盤の中で20年以上動いていた三菱の S-F20DP。接点の開閉回数が寿命に達して、制御不能になっていました。

既設の電灯盤

既設の電灯盤

既設マグネット

既設マグネット

撤去したマグネット

撤去したマグネット

更新部材は三菱の S-T21 です。同じ三菱の後継品を選んだのですが、調べてみると そのまま置き換えられない部分が3つありました。今日はその記録です。

新設のマグネット S-T21

新設のマグネット S-T21

S-T21 22台を更新

S-T21 22台を更新


電磁接触器の動作原理

電磁接触器は、内部に固定鉄心・可動鉄心・コイル・ばね・主接点を持っています。コイルに電圧をかけると固定鉄心が電磁石になり、可動鉄心を引き寄せます。可動鉄心は主接点と機械的に連結されているので、可動鉄心が下がると主接点が同時に閉じる仕組みです。

動作原理図(OFF/ON状態の比較

動作原理図(OFF/ON状態の比較

開放状態(コイル無通電)では、コイルに電圧なし → 磁力なし。ばねの力で可動鉄心が押し上げられているため、主接点は開放されており、負荷に電流が流れません。

投入状態(コイル通電)では、コイルに電圧をかけると固定鉄心が電磁石化し、可動鉄心が引き寄せられます(ばねの反力に打ち勝つ)。主接点が閉合し、負荷に電流が流れます。

電圧を切ると磁力が消え、ばねの反力で可動鉄心が押し戻されて主接点が開きます。電灯の点灯・消灯のたびに、この機械動作と接点の開閉を繰り返しています。


なぜマグネットが壊れるのか

寿命には2種類あります。三菱の MS-T シリーズ技術資料集に明確な数字が出ています。

電灯回路では、白熱灯で定格の10〜15倍、HID灯(水銀灯・メタハラ)で5〜25倍の突入電流が流れます。これはモーターのAC-3級より厳しい条件で、AC-5a・AC-5b(ランプ負荷)として別途定格を確認するのが本来の手順です。今回の物件は20年以上もったので、むしろ長持ちした方でした。


落とし穴1:S-F20DPは生産終了。後継は2段階で切り替わっている

三菱の S/SL(D)-F形 分電盤用電磁接触器は、2009年に生産終了告知が出ています。代替の流れは「S-F20DP(2極・旧品)→ S-N20(中間後継)→ S-T21(現行)」です。

2016年6月生産分から S-N → S-T へ切り替わりました。古い盤の図面に S-F や S-N の型式が書いてあっても、現在発注すると S-T が来ます。発注時に型式の世代を意識しておかないと、納品物を見たときに「型式が違うじゃないか」と現場が混乱します。


落とし穴2:2極ラインナップが消えた。S-T21は3極で外形も大きい

ここが今回いちばんの注意点です。S-F20DPは2極ですが、S-T21は3極しかありません。

電灯回路は単相2線(L・N)で動くので、本来なら2極で足ります。しかし現行品の分電盤用マグネットは、ほぼ全メーカーが3極を主流にしています。

メーカー該当シリーズ2極ラインナップ
三菱電機S-T シリーズなし
富士電機新SC・NEO SC、SC-NEXTほぼなし
日立産機HiMC シリーズ限定的

極数が増えると外形寸法も大きくなります。S-F20DP の頃は2極ぶんの幅で収まっていたところに、3極のS-T21は1極ぶん幅が広い。古い盤は限られたスペースで設計されているので、隣の機器との干渉や配線スペースに影響します。事前に盤内の納まりを実測してから発注しないと、現場で「入らない」となります。


落とし穴3:コイル電圧。これを間違えるとコイルが焼ける

電磁接触器の型式末尾でいちばん重要なのがコイル電圧です。S-T21 には以下のバリエーションがあります。

外観はほぼ同じで、型式の末尾だけ違います。

今回の現場は制御電源 AC100V でしたので S-T21 AC100V を選定しました。もしAC200Vのコイルを発注してAC100Vを印加すると吸引力不足で動作不良になります。逆にAC100VコイルにAC200Vをかけるとコイルが焼損します。発注前に必ず制御電源を実測で確認します。

旧品 S-F20DP も同じく AC100V/AC200V のラインナップがあるので、撤去する前に銘板で読み取っておくのが確実です。盤の図面に「100V」と書いてあっても、実際は別系統からの200V制御だったケースを過去に何度か経験しています。


制御回路の構成。EEU-SM2 + マグネット + 分岐ブレーカー

今回の電灯回路の構成は、分岐ブレーカー(電灯主回路の保護)+電磁接触器 S-T21(点灯・消灯のスイッチング)+自動点滅タイマー 河村電器 EEU-SM2(時刻制御・自動点滅器の機能を内蔵)です。

単線結線図

単線結線図

EEU-SM2

EEU-SM2

EEU-SM2 はソーラータイマー方式で、自動点滅器(EEスイッチ)の機能を内蔵しています。今回は自動点滅タイマーの機能(タイマー側)を使用する設定です。スナップスイッチで EEスイッチ側 / タイマー側 / 切 を切り替えられます。

EEU-SM2の主な仕様(取扱説明書より)

マグネット投入容量の制約と複数台接続

特に注意したいのがマグネット投入容量です。1台のEEU-SM2に接続できるマグネットは、コイルの合計投入容量250VA以下。例として三菱 S-F20DP(AC100V)なら5台まで、SK45なら2台まで、SK95(AC100V)なら1台までと取説に明記されています。

今回は S-T21 を複数台接続する系統です。S-T21 のコイル仕様(メーカー公式値)はこうなっています。

つまり、EEU-SM2 1台あたり接続できる S-T21 の数は 250VA ÷ 75VA = 3台までになります。今回も実測でこの範囲に収まっているか確認しました。台数が4台以上必要な系統では、補助リレーを噛ませて分散させるか、EEU-SM2 を複数台に分けるかの設計判断が必要になります。

スイッチを使わない場合は端子 S1-S2 を短絡、スイッチのみで動かす場合は S2-P3(または P6)を短絡する仕様です。配線時に短絡し忘れて「スイッチを入れても点かない」となるパターンが多いので注意しています。


動作の流れ

竣工図にあった点滅方式結線図のうち、今回の物件で使ったのは「タイマーにて点灯・消灯」の方式です(自動点滅タイマーのタイマー機能を使用)。

設定時刻になると EEU-SM2 のタイマー出力が ON になりマグネットコイルに通電、主接点が閉じて電灯が点灯します。設定時刻になるとタイマーがコイル電源を切り、消灯します。深夜消灯型の街路灯・共用灯でよく使う方式です。


まとめ。20年動いた部品を更新するときに必ず確認すること

電気工事は「同じものを付け替えるだけ」の作業に見えても、20年経つと部品のラインナップが変わっています。同じ三菱でも S-F → S-N → S-T と2回切り替わっています。古い盤の改修は、毎回新品扱いで仕様確認するのが結局いちばん早いです。

マグネット更新完了。このあと整線して終了

マグネット更新完了。このあと整線して終了

エル・エル・イー電気では、こうしたキュービクル・分電盤の改修工事を継続的に受けています。20年・30年経った設備の更新時期が来ている物件があれば、お気軽にご相談ください。


エル・エル・イー電気株式会社

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